3.11「手をつなぎ黙祷した人々」

3.11の一周年を迎え黙祷した人々
3.11の一周年を迎え黙祷した人々

3.11「HUMANBANDあおもり」が主催した、種差海岸でのイベント。

全員が吹雪の中、手をつなぎ黙祷した
全員が吹雪の中、手をつなぎ黙祷した

● 鎮魂・感謝・復興への祈り
 
 昨年3月11日の大震災から1年が過ぎた。この大震災からの復興は長期にわたる支援を必要としている。また、1年たち大震災への支援の仕方も状況に合わせ変化してきている。このような時期にこの大震災を風化させないために、あらためて見つめ直し情報を発信して行こうと、津波が襲った海岸に約300人が手をつなぎ、日の出とともに黙祷し、「ふるさと」を合唱した。このプロジェクトの様子を撮影し、世界に向けて発信していこうというイベントが八戸の種差海岸で行なわれた。
 
● この大震災を風化させるな
 
 この「HUMANBAND on Route 3.11」の大きな感動をきっかけとして、長期にわたり「『我が事』として復興に関わる人々」の確かな絆が生まれた。「点」がどんなにがんばって単独で大きくなろうとしても、「点」は「点」のまま。「点」をつなげて「線」に、「線」を縒りあわせて「面」

に。みんなで力を合わせることによって、今は不可能と思われることもきっと可能となる。

厳しい寒さの中での黙祷となった
厳しい寒さの中での黙祷となった

● アクシデントと仲間の絆
 
 小渡章好(八戸大学・八戸短期大学総合研究所副所長・教授)は、東京でこの素晴しいイベント開催を聞き、この会を立ち上げたのは3月11日の約1カ月前。まず同志を集めるのに奔走した。一時はあまりの短期間の準備のため中止の考えも頭をよぎったという。
 だが被災した人達のことを考えると居ても立ってもおられず、やれるところまでやろうと決心した。
 まず、事務局の場所と電話番号、要項と告知方法を、主旨に賛同して集まった5名のスタッフで相談した。そして、地元の新聞社に発表したのが2週間前のこと。
 スタッフの一人がインターネットに詳しく、「HUMANBANDあおもり」のホームページを数日で開設、フェイスブックを利用しスタッフはネットで報告・連絡・相談を重ねた。だが急遽のため参加者への告知が行き届かず一週間前で数十人のエントリーしかなかった。しかも、中心になっていた小渡代表は、急遽病気が見つかり実施日の十日ほど前に入院することになった。このことでスタッフは燃えた。小渡代表に、私たちは一丸となってこのプロジェクトを成功させることを誓った。

 

● 病室からの指揮

 小渡代表は体調が悪く病院に行ったら、即入院の勧告を受けた。その日の夜、事務局のパソコンの調子が悪いと報告を受けた小渡代表は、知合いから借用してきたパソコンを抱えて顔を出した。一通りの報告を受け指示した後、山本事務局長とスタッフの我喜屋を別室に呼んだ。重々しい空気の中、小渡代表は明日からの入院を告げた。病名を聞いたスタッフは呆然とした。だが、小渡代表は入院が確定したその時でも、プロジェクトへの執念は萎えることはなかった。スタッフたちもやれる所までやろうと、決心を新たにした瞬間でもあった。小渡代表はこの日から、メール、フェースブックなどを活用しベットの上から指揮していたが、心配のあまり病院から抜け出し事務局に青い顔を出し、叱られたりもしていた。しかし、小渡代表が不在になるということで、スタッフは逆に一枚の岩となっていった。

●小渡代表の「メッセージ」
 
 入院を余儀なくされた小渡代表は、以下のメッセージを山本事務局長に託した。
 「東日本大震災から1年たちました。わたしたちは、この日の出の時刻、生きてこの場に立ち、そのありがたさをかみしめることができます。わたしたちは今、1年前の大震災で被災し、さまざまな災害にみまわれたこの海岸にたち、手をつなぎ、ご来光に向かって黙祷し、祈ります。あまりにも数多くの、亡くなられた方たちの鎮魂のために海外も含め、よせられた多くの善意への感謝のために、破壊された町や港のコミュニティーの復興を誓ってわたしたちは、失われた尊とい命を決して無駄にせず、必ずこの地を、東北を復興させます。亡くなった方々は、その命をかけて、わたしたちに絆の存在を気づかせてくださいました。海の向こうには、海外の人たちがいます。そして手をつないだ隣の人がいます。今日ここに集ったみなさんは新しい絆を共有しています。この絆の種をまいて、大きく育てましょう。そして来年もまた、ぜひこの地でお会いしましょう。」

2012年 3月11日
HUMANBANDあおもり
代表 小渡 章好

アメリカのご夫妻もかけつけてくれた
アメリカのご夫妻もかけつけてくれた

● ボランティア
      スタッフの力
 
 その開催までの短期間に、ボランティアスタッフの仲間が続々集まった。
 事務局は、「しるばにあっぷる」の青森県福祉サポート協会(理事長・山本 光一)が提供。ベテラン女性の我喜屋 千枝子・高橋 眞理子が交代で担当。本部に利用してくださいと種差に建物を有する、株式会社メビュウス(代表取締役・福島 真理恵)から申し出があり、当日の受付スタッフの手伝いまでしてくれた。

全員でふるさとを合唱した
全員でふるさとを合唱した

「21はしかみんぐ」(代表・伊藤 武男)は、PA(音響)機材や看板の無償提供と担当を申し出た。毎年千人以上の参加者がある十和田湖ウォークなどを主催をしているMTC21(代表・野呂 猛)は、設営機材と運営スタッフの協力。何でも指示してくれという心強い言葉。笑売繁盛会議(同志・津村 柾広)はたくさんの仲間を引き連れ会場運営・駐車場誘導を快諾。トライポットスタジオ(映像制作配信・沼畑 武行)は、ホームページ制作・参加者名簿管理・当日のインターネット配信を担当した。 

 参加者約300名全員の写真撮影担当は、フォートセンター惣門(代表取締役 米内 義雄)が社員全員を引き連れ参加。また、県内各地から駆けつけてくれた「青森県広告写真家協会」の皆さんが協力体制をとって下さった。司会進行はコミュニティ放送局BeFMのアナウンサーがボランティアで担当。 当日は、会場の八戸種差海岸の観光協会、民宿の皆様が深夜から休憩所・食事や風呂を提供してくれた。なんとボランティアスタッフはその数74人となった。

 小渡代表は「ありがたい…」と目を潤ませた。正に短期間での奇跡のプロジェクトであった。参加してくださった方々の中には地元のみならず東京、秋田、岩 手、県内でもむつ市、弘前市、青森市からも申込みがあった。会社ぐるみでの参加や、八戸市内のコーラスグループ・プリマベーラ(野田 令子)は「ふるさと」合唱の指揮をしてくれた。家族やカップル、仲間同士と多種多様な参加者の皆さんが続々と増えていった。実施までの時間が無いというこ とが、逆に行動を駆り立てた。そして、深夜の交通手段もないこの地「種差」に大勢の人が集まってくれた。

スタッフも一緒に黙祷
スタッフも一緒に黙祷

● 吹雪の中の 「黙祷」と「ふるさと」合唱

 午前5時から開会式が始まった。外はまだ真っ暗で雪も降っていた。風もあり寒い。子ども連れの家族もいる。
 小渡代表のメッセージが読まれた。代表の思いと参加者の思いがつながった感動の時であった。頬を打つ雪は冷たかったが、心の中に暖かいものが流れ込んだ。そしてコーラスグルーブの指揮のもと「ふるさと」の大合唱が始まった。みんな精一杯の声を出して歌った…。最後にスタッフの山本・金田一チームのパラモーターがHUMANBANDの成功を祝して雪の大空に舞った。
 津波が襲った東北の地域に完全に横一列のHUMANBAND が完成し、全員が海岸線に並ぶその時まで、HUMANBAND プロジェクトは、毎年3月11日に実施すると小渡代表は語る。今回はまだ準備段階、来年の実施に向けてこれからすぐ活動に入るという。日の出こそ拝めなかったが、大勢の仲間のチカラで奇跡を起こした1日であった。


取材 しるばにあっぷる山本   撮影 西澤照光さん

パラモーターがHUMANBANDの成功を祝して雪の大空に舞った
パラモーターがHUMANBANDの成功を祝して雪の大空に舞った